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『喜久屋』、上野山圭祐さん、頑張れ

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2018年1月21日 (日曜日)

『オンギ』、ホットする味、韓国小皿料理


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 西荻窪駅南口を出て、左手の線路沿いの平和通りを荻窪方向に5分ほど歩いて行くと『韓国小皿料理オンギ』に着く。韓国料理イコール焼肉と思って、そんなイメージの店構えを想像していくと通り過ぎてしまうかもしれない。ガラス張りのなかが見える店はおしゃれな喫茶店といった感じだ。ローマ字でOnggiと書かれたドアを開けて中に入ると、「いらっしゃいませ」と笑顔の素敵なキム ユナさんが迎えてくれる。彼女が一人で切り盛りしている店内は、5,6人が座れるカウンター席と4人掛けのテーブル席が一つのこじんまりした、落ち着ける雰囲気。

―――早速、店名の『オンギ』の意味を聞いた。
「オンギは焼き物で壺とか甕の意味ですけど、日本で瀬戸焼とかなんとか焼きというのと同じで、焼き物のオンギ焼きですね。工芸品もありますし、キムチとかの発酵食品を容れたり醤油漬けに使ったりして、毎日の生活で普通に使っている壺ですね。韓国で料理を作るとき普通に使われている道具ですので、ま、そのイメージが、普通の家庭で食べるような、おかずのような料理を出すお店のイメージにつながるかな、と思ってオンギと付けたんですね」。
 韓国で日常的に食べている料理を提供するお店ということで、さらに、韓国小皿料理と前にも付けて『オンギ』としたわけだ。あらためて扉に書かれた店名や頂戴した名刺を見ると、Oの字の中には壺の絵がデザインされていた。お店にお客できていた韓国出身の人が、この絵を一目見て、韓国料理の店だと分かった、と言うぐらいで、故郷のシンボルのような存在なのだろう。

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―――韓国料理というといろいろあると思いますが、なぜ小皿料理なんですか?
「あの-、韓国では家でも外でも、食べるとき、品数を多めに出すんですね。見た目ちょっと贅沢でないともてなした感じがしないんです。日本に来て一番違うなと感じたのが、品数が少ないな、ということでした。でも、お店で多く出したら一人で食べきれないし、お酒も飲めなくなるでしょう。一人で色々食べられる方がいいと思って…」とほほ笑む。

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―――お店のメニューにはキムさんの出身地の影響があるんですか?
「いま出しているのは韓国の一般的なものですね」。メニューにはサラダ、キムチ&和え物、ナムル、韓国漬物、一品料理、チヂミ、と並ぶが、ごはん物がない。お酒を飲むときの肴になるものがメインだ。

「ごはんをやると定食屋みたいになっちゃうし、私一人ではできないですね。夏に冷麺はやりますけど。でも、常連さんで、よそで買ったものを持ってきて、今日、これでお願いと、裏メニューみたいだけど、頼まれて作ることがありますよ」と笑いながら話す。
 お気に入りの料理を紹介すると、まずチヂミ。海鮮、じゃがいも、にら、エリンギなど7、8種類ある。「何でも衣をつけて焼けばチヂミですね」とキムさんが解説してくれる。焼きたての衣はふんわり、中身のレンコンは軽くサクッとしながらしっとりとジューシーで柔らかい。焼き過ぎの焦げめもなく、さっぱりしたタレをつけて食べると、パクパクっとお腹に収まってしまう。皮付きニンニク丸ごとの漬物もびっくりするが、なかなかにオツだ。チョレギサラダ、ナムルも美味しい。一品一品は小皿に手ごろな量でだされる。どれも味がよく選ぶのに迷ってしまうほどで、これがまた楽しい。


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「お客さんはほとんどが日本人ですね。ここに来る韓国人のお客さんはたいてい私の友達、忙しくなると手伝ってくれたりして」と言って大笑い。店内は落ち着いていて、明るく、かつての“おじさんたちの呑み屋”ではない。一人住まいで家では料理をしない人も、この店の家庭的な匂いとキムさんのもてなしに、自分を取り戻しほっとするのではないだろうか。
 店が混んできても、客の注文を忘れたり、間違えたりすることもなく、料理を用意しながら何人もの客と話が弾む。話題は政治の話やら日韓文化の比較の話、硬軟取り混ぜて何でも来いという風で、知的な会話も楽しめる。カウンターに座って黙って呑んでいても、いつの間にか話に引きずり込まれてしまうに違いない。キムさん、一度来たお客さんの顔は忘れないそうだ。
「まあ、プロですからね。それに顔を覚えると喜んでもらえるし…。でも、名前を覚えるのは大変。日本人の名前は韓国人より長いから」とにっこり。キムさんの話す日本語は、私たちが話すのと変わりがないくらいに上手だ。

―――きれいな日本語ですけど、どこで勉強されたんですか? 「来日する前にひらがなとカタカナぐらいは覚えてきましたけど、日本で日本語学校に2年間通って勉強しました。嬉しいね、ほめられて」と今度は照れ笑い。

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―――キムさんご自身のことを少しお聞きしますが、日本に来られたきっかけは?
「最初ワーキング・ホリデーで2007年に来たんですよ。ちょっと1年ぐらいいて、日本の生活を経験して少し言葉を覚えたら帰ろうと思っていたんですけれども、楽しくなっちゃって留学することにして日本語学校に通ったんです。楽しくなったのは、私の故郷はプサンですけど、そこから離れているからなのか、ちょっと自由な気がして、うまく説明できないけどそういう感じが自分は好きだったんです。東京はグルメ天国じゃないですか。いろんな国の人が集まっていて、それぞれの国の料理が楽しめる。そこからいろいろな異文化が体験できる、というのも楽しかった。私は食べることも好きだし、作ることも好きですね。それで、日本語学校の後、料理の専門学校に行きました。」
「子供のころから料理は好きだった、ってゆうか、よく手伝わされたんですね。うちは大家族だったんです。父が長男なので兄弟が一緒だったりで、食事の準備は大変だった。一番多かったときは8人ぐらいいたんじゃないかと思います。それに普段の食事だけでなく、日本でいう法事?、先祖の命日だとかお盆、それに旧正月とか、とにかく年に何回も特別な料理を用意しなければならなかったんですね」。

―――それで料理の腕を上げたんですね。特別な料理というのは地方色豊かな伝統料理なんですか? 「法事で出す料理は大体決まってるんですね。日本のおせちみたいに何が入らなきゃいけないとか、そういうのが決まっているんです。そこにはニンニクを使ってはいけないとか、唐辛子は使っちゃいけないとかっていうように……」。

―――唐辛子なんか何にでも使われているように思っていましたけど?
「昔のキムチは白かったんですけれども、日本から唐辛子が入ってきて使うようになったんです。ですから昔のキムチは辛くなかったと思いますよ」。

―――キムチの地域による違いはどういうものなんですか?
「地方によっても家庭によっても味は違うので、一言でいうのは難しいんですが、プサンだと海のそばなので、ふつうは魚の塩辛を使うことが多いんですけど、魚を丸ごと入れて漬けるのもありますね。発酵すると骨まで食べられるんです。ソウルでは魚は貴重だからイカの塩辛なんかを使う。昔は冷蔵庫がなかったから保存食には塩を多く使ったけど、今はキムチ用の冷蔵庫まであったりするので、だいぶ塩気はなくなりましたね。醤油漬けとかみそ漬けもありますよ」。

―――どうして西荻にお店を出すことにしたのですか?
「1年ほど物件を探しました。神楽坂や飯田橋辺りで物色したりしたんですが、なかなかいい情報がこない。それで探す範囲を中央線沿線まで広げたら、このお店が見つかったんですね。ここは一目ぼれでした。これはいいなという感触でした。前のお店も食べ物屋さんだったということで、すぐ借りることができました。

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 西荻の街の落ち着いている雰囲気も気に入りました。日本に来て十年になりますけど、大久保とか高田馬場に住んでいたころは日本にいるという感覚を持つことがあまりなかった。でもここにいると、お客さんもいろんな職業の人がいて、そういう人たちとつながりができていくじゃないですか。日本人の中にやっと入れたという感じがして、これが日本での生活かなという実感がわきますね。」

―――開店して一年、これからの希望とか将来への夢を聞かせて下さい。
「女性のお客さんがもっと増えてほしいな、という願いはあります。そうなれば、ここでキムチの漬け方とか、料理教室をやれるんですけれども。ま、ちょっと大げさですけど、韓国文化の発信をしていく、料理も文化の一つですから、料理でできることをやっていきたいと思っています。宮廷料理や焼肉料理、辛い味つけだけが韓国料理じゃなくて、わたしが創ってここで出している小皿料理も韓国料理なんだと、知ってほしいですね。」
 西荻にまたいいお店ができたなと、強く印象に残りました。女性の方、一人でも気楽に入れますし、食べて、飲んで、料理の話など楽しんでください。常連さんが増えることを願っています。食を通じて韓国文化の発信をしたいというキムさん、これからのご活躍が楽しみです。


韓国小皿料理 Onggi(オンギ)

東京都杉並区西荻南3ー19ー13
TEL 03−6883−3268

営業時間 17:00ー23:00
日曜定休

文:鈴木英明、窪田幸子
写真:澤田末吉

取材日 2017年6月28日


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